理系Sの牝奴隷には言えない話
元、”御主人様”だったvetのSMに関するいろんな話。
はじめに

 いらっしゃいませ、とでも書くべきだろうか。とにかく、あなたが見に来てくれたことは素直に嬉しい。ありがとう。

 このブログはSM、男女の主従関係に関することを主に取り上げて書いている。なので少しアブノーマルだ。だから、初めてこのブログを訪れた人は、右側の欄の”このブログについて”をまずは読んで、それに同意できた場合のみ、読み進めて欲しい。

 また、このブログ、少々ややこしい構成になっている。そのあたりも説明してあるので、それも理解してから読んでもらえればと思う。説明を読んで問題がなければ、二度目以降からは以下のエントリーを好きなように読んでもらえればそれでOK。

 AVや他の本格的なSM系サイトなどとは、多少違った視点からのSMの世界を知ってもらえれば、幸いだ。特に読者を指定するつもりはないが、御主人様を探しているM女などにはSMの実態を知るということで、参考になるのではないかと思うので、御主人様を選ぶ前に、SMの世界に飛び込む前に読んでもらえれば嬉しく思う。

 私への意見や質問、相談、その他の話などがある場合には、右側の欄の中段あたりにある”管理人、vet宛メール”のところのリンクから、メールフォームにいき、メールを送っていただければと思う。メールフォームは2つ用意してあるが、どちらから送ってくださっても構わない。また、各エントリーのコメント欄に書いてくださってもいいので、気軽に話しかけてくれればと思う。


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奴隷に対しては、御主人様として接する。

奴隷は奴隷であり、それ以上ではない。

決して、”女”などではない。性別を表現するなら、ただの牝。

でも、全ての主従関係が、ここまで徹底しているとは言わない。

”奴隷”と言いながら、ノーマルな男女関係での女性以上に丁重に扱う御主人様も知っている。

主従とか、SMとか、そういう言葉で、表現される関係における、受け身側(M側)の扱われ方は、様々だ。

主従関係を持ったことがないとか、そういう人と関わったことがない人は、世に知られているイメージをそのまま当てはめると思うから、想像できないかもしれないが、主従関係だからといって、必ずしも、M側が常に虐げられた状態にあるとは限らない。

私も、そのことは後から分かった。

SMをする前、主従関係になる前、また、なった直後に持っていたイメージは、見事に、よく言われるところの”主従”そのものだったのだが…。

その後、本当に主従なのか?と思える人達に、私はたくさん出会った。

だから、私の中の”主従”というものは、かなり広い意味を持っている。

むしろ、”主従”という、括りから外したほうが適切ではないかと思う人たちもいるくらいだ。

ただ、SとMの意図的な(それを納得した)組み合わせによる関係を、私は、一応、”主従”もしくは、”SMパートナー”と思っている。

もちろん、そういう人達が居る、とはいっても、やはり、”主従”といえば、M側が”奴隷”として、”奴隷”らしく扱われることが多いのは事実。

”奴隷”というのは、”女”から堕ちたもの、として扱う御主人様も、当然ながら、たくさん居る。というよりも、それが主流だ。

そして、少なくとも、私の考え方、私の望んだ主従関係は、そういうものだったし、私の奴隷も、私がそんな風に扱うことに、M性を満たされていたのだと思って、そう接してきた。

ただ、この中には、表向きの部分、というのがある。

奴隷に対しては、「お前は奴隷であって、女としては扱わない」という風に接していたが、その中に、少し矛盾したところがあった。

私の奴隷に対する気持ちから発生した矛盾だと思う。


私の中には、奴隷は”奴隷”だと思い、虐げて扱う部分がかなり多くある。

だが、同時に、奴隷は”女”であるという事実が、どこまで行ってもついてまわってきていた。

”女から奴隷に堕ちたもの”であると言いつつ、”女である”という矛盾。

いくら、奴隷に堕ちたと言っても、それを”女”として認識するところが私の中から無くなることはなかった。

矛盾は矛盾のまま残った。


逆に言えば、分かりやすいか。

”女”である、ということを全く考えなくなるのなら、男の奴隷でも良いと言える。

だが、私は、男の奴隷なんて持つ気は全くないどころか、M男を苦手としていた。

もちろん、M男の方に、掲示板でも、オフ会などで会っても、話は普通にしたので、人として嫌いというわけではないのだが、私がしたのは、あくまでも人としての付き合いであり、その人を、Mとしても、奴隷としても、見ることはできなかった。

そのことを思えば、「奴隷が女である必要性」というのは、私には確実にあったわけだから、”女”というものを奴隷から完全に排除することが出来ていないということは、明白だ。

むしろ、女らしくあって欲しいと思っていた。

だから、私が奴隷に求めたのは、奴隷らしさとともに、女らしさだと思う。

女らしさといっても、性格によって色々とあるし、私の奴隷も、それぞれだったから、一概にどんな言動や気持ちが、女らしい、という私の理想像があったわけではないのだが、

少なくとも、女としての自覚を備えていて欲しいと思っていたように思う。

奴隷のことを私はそういう風に考えていた、というよりは、当時、そういう風に考えるまでもなく、そういうものとして、受け取っていたから、私の中には、一つの葛藤が生まれていた。

それは、奴隷を、奴隷として扱っていいのか?女として扱っていいのか?ということ。

これは、私に限らず、御主人様によって違うのだろうと思う。

だから、余計に難しい。

抽象的な話になってきたので、例を出す。


例えば、電車に乗ったとき。

混んでいて席が埋まっているような場合。

奴隷と一緒につり革に掴まったりしているのだが、その目の前で、誰かが立って、一つ席が空くとする。

その時に、どちらが座るか?

なんてことを考えてみる。

御主人様と奴隷ということで考えれば、当然のように御主人様が座るのだろうと思う。

でも、何の躊躇もなく、そこに座れるのか?


例えば、滑りやすい道を歩くとき。

御主人様は自分のペースで、ヒールの高い靴を履いていたりする奴隷のことなんて無視して、好きなように、どんどん歩く。

それに奴隷が転びそうになりながら、必死で付いてくる。

靴擦れしたり、足を捻ったりするのも、無視して。

それで、いいのか?


例を挙げれば、こんなこと。

実際、私の知り合いの主従と一緒に出かけたとき、電車で、奴隷は立たせて、御主人様の方が、何の躊躇もなく座っているのを見たことがある。

だから、それでもいいのだと思う。

本気で”奴隷”だというなら、その態度が正しいと思う。

多分、純粋な意味での”主従”であるということに、矛盾しない行動だ。


でも、私にはそれが出来なかった。というか、できなくなっていった。

席が空けば、譲り合いになってしまった。

「座ってください」

なんて奴隷が言う。

でも、私は奴隷を立たせたままでは座れない。普通にそう思った。

「お前が座れ」

「でも、お疲れでしょうから」

やっぱり奴隷も座らない。

だから、そういう時には、

「お前に上から見下ろされるのは不愉快だ。だから、お前が座ってろ」

なんて、屁理屈をこねて奴隷に座らせていた。


歩くときにしてもそうだ。

冬、道が凍ったりする時がある。

函館に居れば、冬の普通の風景なのだが、東京にいた時には稀だったけれども、そういうとき、外を一緒に歩いたこともある。

凍っていないまでも、雨の日なんかに、歩道のタイルが濡れていたりする。

滑りやすい道。

私は、自然に手が出た。歩調を合わせた。

奴隷が転びそうになれば、ちゃんと力を入れてそれを支えた。

本当に奴隷というなら、転ぶに任せていたと思う。

でも、そんなことはしなかった。

出来なかった。

やっぱり、手が出る。ほぼ無意識に。

「御主人様、ありがとうございます」

なんて奴隷が嬉しそうに言うのだが、言われれば言われたで、またなんだか居心地が悪いので、

「お前が壊れると面倒だ」

なんて返す。

あくまでも奴隷なんだという風に、言葉では返していた。


私が御主人様になりたてのころは、少し違った。

こういうことを思ったとしても、御主人様としているべきだ、そうしないと主従が壊れるのではないか?という気持ちが、ものすごく強かったから、この限りではないのだが、いつの頃からか、徐々に、こんな風になっていった。


これを思い出してみて考える。

こうしたのは、奴隷が女だったからなのか?

それとも、奴隷は奴隷、でも大切な物であったからなのか?

その両方なのか?

未だにこれはよくわからない。


でも、調教の時には、こういう気持ちにはならない。

徹底的に奴隷は奴隷。それは、確実に言える。

私が椅子に座って、奴隷を縛ったままでずっと部屋の隅に立たせて、鑑賞したり、放置したりしていたこともある。

電車で、空いた席に座らせたのとは真逆のこと。

むしろ、電車で立っているほうが楽なはずだし、時間も短い。


奴隷を床に投げ出して、その頭に、顔に、足を乗せたことなど数えきれない。

滑って転ぶどころか、床に意図的に転がした状態に、さらなる追い打ちをかけている。

このどちらをしても、やめようなんて微塵も思わなかった。

これは調教だから、と言えば、なんとか、前述のことと矛盾しないといえるかもしれないが…。

でも、私は調教だと意識して、そうしようと思っていたわけではないような気がする。

自然に、奴隷をそのように扱った。それが当たり前だった。


調教以外の時、一緒に出かけたり、部屋などで、普通に過ごす。

私は、奴隷のことを、そこでも、奴隷だと思っていたし、奴隷には奴隷であることを要求した。

そして、奴隷も、奴隷で居たのだと思う。調教の最中と同じように。立場は変わっていない。お互いの口調も、態度も。同じ。

でも、私が、”奴隷”の中に、”女”を見ていたのは、冒頭に書いた通り、確かなことだ。

私は、奴隷が”女”だから、一つだけ空いた席に奴隷を座らせ、滑りそうな道を歩くときに手を引いたのだろうか?

よくわからない。

こんなこと、どうでもいいと思う方も多いと思うし、私が私の良いようにしたのだから、私はこれでよかったのだが…。

もしも、心底から、”女”ではない、”奴隷”になりたいと、私の奴隷が願っていたのであれば、もしかしたら、こんなことはしないほうが、奴隷のM性を満たしてやれたのかもしれない。

奴隷であることを、常に徹底するべきだったのかもしれない。

ただ。

奴隷を空いた席に座らせて、それを見下ろしていた私は、幸せだった。

足元が滑りそうな道で、私が掴んで歩いた奴隷の手は、とても温かく感じられた。

その体温は、私の心をも、しっかりと温めてくれるものだったと思う。

もちろん、奴隷にはそんなこと、言っていないのだが…。


テーマ:主従関係 - ジャンル:アダルト



その日、私と理沙は、外で待ち合わせをした。

食事をしてから、ホテルに入ることにしていた。

待ち合わせ場所に私が行った時、そこで待っていた理沙はいつもの理沙となんら変わりがないように見えた。

私が、理沙がプロポーズを受けたことを知っているとは思っていない。

そして、そのことで、理沙に対する様々な感情が心にあることも、気がついてはいなかっただろう。

理沙のことを、少し遠くに感じるようになってきてしまっているようなことも…。

私が、行くと、笑顔で迎え、

「今日も、よろしくおねがいします」

と言って、頭を下げた。

「ああ」

と言いながらも、私は、理沙にどう接すればいいのか、この時点でも定まってはいなかった。

ちょっと気を抜いたら、理屈で押さえ込んでいる、理沙を責めてしまう気持ちが溢れでてきそうだった。

それは、言いたくなかった。

理屈の上では、私が言うべきことではない。

でも、言わないで居られる自信も、あまりなかった。

だから、いつにもまして、私は無口だったように思う。

一緒に食事をする。

いつものことだが、理沙は、食べているときは、楽しそうだ。

だから、

「これ、美味しいですね!」

なんていって、嬉しそうにしたり、

「御主人様の、少しいただけませんか?」

なんて、私が頼んだ料理に手を出してくることも、よくあった。

そして、そんな時は必ず、

「これも、どうぞ」

といって、私の皿に自分が頼んだ料理を乗せてきたりするのだった。

その時も、そんな感じだ。

いつもの理沙。

でも、私はいつもの私ではなかった。

ただ、幸いなことに、私が、はしゃぐ理沙に合わせることなく、少し苦笑するくらいで、口数が少ないのはいつもの事だったから、

理沙は、私も普段通りなのだと思っていたのだと思う。

理沙の笑顔は絶えなかったから。

食事を終え、喫茶店に移動して、お茶を飲んでいるときも、理沙の様子は変わらない。

いろいろな話題をコロコロと転がしながら、私に言う。

そして、にっこり笑う。

「御主人様、今度、一緒に行きたいです」

なんて言って、語るのは、大抵、理沙がイベントの仕事などで行った中で、面白いと思えた場所だ。

たしかに理沙のチョイスは的確だった。

理沙に誘われて行ったところで、面白くなかったことは、まずない。

さすがに、イベント関連の会社の社員だけのことはある。

「そうだな…」

私は、理沙の言葉にこうやって相槌をうつ。

こんな風に明るく話をしてはいるが、理沙はそのときも、やっぱり奴隷で、私が少しでも嫌だといえば、そのことについては二度と口にしなかった。

喫茶店で、しばらく時間を過ごしてから、ホテルに入った。

部屋に入ると、理沙は服を脱ぐ。

私の前に正座し、手をつき、頭を下げて挨拶をする。

奴隷としての挨拶を。

そして、首輪をつけて欲しいといった。

首輪。

それは、奴隷を象徴するものだ。

私の中での道具としてのこだわりは、縄のほうが強かったかもしれないが、奴隷を奴隷らしく見せるものということなら、おそらく首輪のほうが強いだろうと思う。

私の奴隷である印。

そういう物なのだ。

それを付けて欲しいと言われた。

私に嘘を付いた奴隷に…。

そこが限界だった。

その日、理沙と会ってからずっと…。

いや、もっと前、理沙が幸一にプロポーズをされたことを私に言わなかったことを知ってから、ずっとずっと理性で抑え続けてきたものが、もう、抑えられなくなった。

だから、首輪をつけて欲しいと、頭を下げ、首を差し出した理沙に私は言っていた。

「プロポーズ、されたんだろ?」

と。

その一言が、理沙との関係を、壊す方向に舵を切る可能性が高いものであろうことも、わかっていたのに。

私は、言わずにはいられなかった。

耐えられなかった。

そして、私の言葉に驚き、頭を上げた理沙の顔が歪んでいた。


テーマ:主従関係 - ジャンル:アダルト

先ほど、続き物の話(第114話)を書いた。

このエントリーは、それに関する、ちょっとした話なので、別に読まれなくても問題はない。


今回の、続き物の話のエントリーを書くまでに、約3ヶ月かかった。今までで一番、間が開いた。

前回の113?話は美佳のこと。その当時の状況説明のようなもの。

私にとっては理沙同様に重要なことなのではあるが、少し横道の話だったから、それを除いて考えて、112話を書いたのが、6月9日。

それ以来、ずっとその次を書けずにいた。

出来事は覚えている。書く内容は決まっている。

でも、別れを決定づける部分の話というのは、思った以上に書きにくかった。

正直、途中で書くのをやめようかと思ったこともある。

世の中のブログを見ていて、思っていた。

御主人様(奴隷)と別れたり、関係が悪化してくると、ブログの更新が止まる事が多い。その理由を身を持って知った気がする。

圧倒的な抵抗感がある。書こうとするだけで気持ちが溢れてくる。

理沙との別れに関しては、私の中での一番遠い別れの話だから、かなりの部分が思い出になっていて、そんなに難しくないだろうと、当初は思っていたのだが…。

そんなに甘くなかった。

これを思い出すと、理沙とのことはもちろんだが、他の奴隷との別れのことも思い出したりした。

最後の奴隷との別れのことなど、私にとっては、思い出と言うよりも、まだ鮮明な記憶だから、キーボードを打つ手が止まる。

情けないものだなと、苦笑したのだが、こういうことを何とかしたいから書いているブログなので、これはこれで良いのだろうと思う。

奴隷のことを思い出すのは嫌なことではないのだし。

だから、自然に書けるのをずっと待っていた。

読んでくださっている、皆さんにしてみると、本当に未練たらしい奴だと思われるのだろうが…。

実際、私は、そういう奴なので、それはそれとして、見ていただければと思う。


そういえば、その未練たらしい部分について、ご質問をいただいたのだが、

「過去の奴隷に今でもコンタクトを取ったりするのですか?」とのことを、何人かの方に訊かれた。

前に書いたような気もしないでもないのだが、私が自分から、過去の奴隷に連絡を取ったことはない。

奴隷との連絡を終わりにすると決めた時以降、私から電話、メール、会いに行く、その他のことはしていない。

ただ、奴隷の方から、しばらくして連絡をもらったことは何度かあり、それに関連して話をしたことも、会ったこともあるし、ちょっと困り事があって協力したこともある。

年賀状を送ってくるのもいたし、数年後に話がしたいと言ってきたから、会ったこともある。

だから、別れたら、それっきりだと、拒絶するつもりは、私には全くないのだが、私の方から何かすることは今までに一度もなかった。

未練がましい私にしては、何もしていないのは、不思議に思われるかもしれない。私も不思議だ。

でも、別れた奴隷の今に、万が一にでも、何か、悪い影響を与えたくない気持ちというのはある。


ちょっと話が逸れた。

理沙との別れの話に関しては、この週末に、ふと、「書けるな」と思って書き始め、実際、ある程度のところまで、書けた。

書き出したら、一気に書けた。

理由はよくわからないが、少し気持ちが切り替わったのだと思う。

そして、それが、とても嬉しかった。

まだ理沙の話を最後まで書いたわけではないのだが、何か、つかえていたものを、一つ、外せた気がして、嬉しかった。

別れに向かう話が書けて嬉しかったと思うとは思わなかった。

避けることなく、ちゃんと書けたのが、良かったのだろう。

なんだか、不思議な気分がする。

そんな、今の気持ちも、書きとめておきたくて、この蛇足なエントリーを書いているということだ。



ただ、実際に書いた話は、とても長くなったので、分けた。

今回が”前編”になっているのはそういうことだ。

連続するのもなんなので、間に他のエントリーを挟むかもしれないが、少しの間、続きものの話にお付き合いいただければと思う。

テーマ:ひとりごと - ジャンル:アダルト



私はついに抑えきれなくなって、理沙に、幸一からプロポーズをされたのであろうと、告げた。

それは、事実について、共通認識を持つということも、もちろんあるのだが、それよりも、理沙が私にした「幸一との全てのことを報告する」という約束を違えたことを指摘するという意味合いのほうが圧倒的に大きかった。

だから、それを告げられた瞬間の理沙の顔は歪み、血の気が引いているように思えた。

取り返しのつかないことをしてしまったと、理沙がおそらく思っていることが、その表情から如実にわかった。

「御主人様…。どうして、それを…」

「…」

私は黙り込んだ。

理沙にこのことを告げるというのは、理沙との関係を壊すことに繋がる可能性があるのは私も自覚していた。

なのに、やっぱり耐え切れなかった。

言ってしまった。

そのことで、私も、固まっていたと言ってもいい。

後先考えずに、感情のままに動くことを私はあまりしないし、好まないのだが、この時はそうだった。

だから、言っておいて、そのことに、おののいたのは、私も同じだった。

もしかしたら、私の顔も理沙と同じように、血の気が失せていたかもしれない。

「幸一さん…、ですね…」

理沙はそう言った。

泣いていた。

私と理沙は、お互いに見つめ合ったまま、黙り込んだ。

どのくらいそうしていたのかは、良くわからない。

短い時間だったかもしれないし、長かったかもしれないけれど、体感的にはものすごく長く感じた沈黙だった。

そして、先に口を開いたのは理沙だった。

「首輪は…。付けていただけないでしょうか?」

私は、その言葉にも黙っていた。

何も言えなかった。

理沙の顔がさらに歪んでいく。涙が溢れていく。

「やっぱり、嘘を付くような奴隷は、ダメですよね…」

理沙はそういうと、うなだれた。

理沙の表情が見えなくなった。頭頂が見えているのだが、それでも、理沙の顔は容易に想像がついた。

私は、情けなくも、やっぱり何も言えなかった。

また、しばらくの沈黙。

そして、やっぱり先に口を開いたのは理沙だった。

すっと顔を上げ、泣きはらした目で私を見据えて、懇願した。

「何か、言ってください!お願いですから!」

でも、私は何を言えばいいのかわからなかった。

口を開けば、理沙の嘘を責める言葉が出てきそうだった。

というか、確実にそうなる。

理沙に、プロポーズの件を告げた事自体が、そもそも、そういうことだ。

その話題で、他の意図のある言葉など、私には無い。

こうなるのは、冷静に考えればわかったのに、冷静に考えることなく、理沙に言ってしまった。

だから、私は、次に何を言えばいいのかわからなかった。

理沙を責めれば、楽だったのかもしれない。

実際、私の中には理沙を責める言葉であふれていたのだから。

でも、それを言ったら、終わる。

終わらせるところまで、私は責め続けてしまう。

おそらく、取り返しのつかないところまで行ってしまう。

それもわかっていたのに。

やっぱり、告げてしまった。

必死で考えた。

理沙が、泣きながら、私にすがって、何か言ってくれと叫んでいるのを無視して、考えていた。

でも、考えても、考えても、この状態から、理沙との関係を元に戻す方法というのは、思いつかなかった。

命令すればいいとは思った。

嘘を付いた罰を与える。そして、そのまま私の奴隷で居ろと言えばいい。

理沙が私に嘘を付いたことで、後ろめたさを持っている今なら、私のいうことを聞かせることができる。

なんてことを思った。一瞬、名案だと思ってしまった。

そして、多分、それは、可能だったと思う。

でも、できなかった。

理沙の弱みにつけこんで、いうことを聞かせるくらいなら、最初から命令していればいいことなんだ。

わざわざ、幸一に会わせるなんてことをしてきた意味がない。

理沙に選ばせると決めたことが、全て無駄になる。

それに思い至った時に、もう、私には選択肢が思いつかなかった。

結局、私が口にしたのは、それまでと同じ事だった。

「どうするか、お前が決めろ。そう言っただろ」

「でも、私…」

理沙が、絶望したような顔をして私を見上げていた。

それを見た時に、私もどうにもならない気持ちになった。

そして、やっぱり、勢いのままに言い放っていた。

「結婚したかったら、結婚すればいい。幸一はそれを叶えてくれるんだから」

「…」

「あいつは、俺にはできないことを叶えてくれるんだ…」

これを言うことは悔しかった。

「でも…」

そう言って、理沙が私を見上げた顔は、先程までとは少し違うように見えた。

涙を流し、歪んでいたのだが、私には、何か少しホッとしているように感じられた。

同じ顔だったのかもしれないが、私にはそう見えた。

私が、そこまで言ってしまったから、そう見えただけなのかもしれないが…。

全く冷静ではなかったから、良くわからない。

でも、この時だったと思う。

私は、理沙が、幸一のところに行きたいのだろうと、幸一と結婚したいのだろうと、なんとなく、わかったのは。

テーマ:支配と服従 - ジャンル:アダルト



私は、理沙に服を着ろと命じていた。

理沙は、首輪を付けられることもなく、服を着ろと言われた意味を、理解していたと思う。

私は、奴隷とだけで過ごす室内では、ほぼ確実に、首輪をつけてきたのだから。

それをしないということは、どういうことなのか?

すぐに思い当たったと思う。

私が、思っていたことに、多分、理沙は、気がついていたと思う。

理沙は、服を着ようとはしなかった。

それは、理沙の意地だったのかもしれない。

そして、私はそれに張り合ってしまった。

自分の中の感情を、なんとか処理するために。

だから、こんなことを、理沙に言った。

「理沙、正直に言え。幸一に対して気持ちがあるんだろ」

「…」

それを聞いた理沙は、ボロボロと涙をこぼして、泣くだけだった。

それでも私は続けた。

「幸一のところにいけば、お前は幸せになれるって思ってるんだろ」

と、何度も。

これを言うのは、卑怯だったと思う。

理沙は、おそらく頷くしか無い。

幸せになれないとは、おそらく言えない。

それはわかる。

理沙は幸一に対しても想いがあったのだから。私はそれを知っていて言った。

そして、私の問いに頷いたなら、それは理沙が選んだことになる。

自分から幸一のところに行くと言ったことになる。

そんな状況を作った私は、本当に卑怯だったと思う。

未だに、この時の私を、私は嫌悪しているし、自分のずるさや弱さを悔いている。

でも、そうしないと、辛かった。

耐えられなかった。

私は自分のことしか考えてなかったから、こんなことを言えたのだと思う。

「どうなんだ?答えろ」

そんな私に、理沙が、やっと答えた。

「幸一さんは、私を幸せにしてくださると言っていました。だから、きっと幸せになれると思います」

「それなら、それでいいんじゃないのか」

「でも、御主人様は…」

理沙は、きっと、自分を必要としていると、私に言って欲しかったのだろうと思う。

でも、私がそんなことを言ってしまったら、また同じ事を繰り返す。

私と幸一の板挟みという理沙の状況がさらに続くことになる。

理沙のため、と思っていたのだが、私もその状況が辛かったのだと思う。

逃れたかったのだと思う。

だから、それを終わらせようとした。

理沙のことを手放したくないと思っていたのに、もう、その場のその状況を何とかすることしか頭に無かった。

その時の、私の勢いもあった。

何も考えていない、勢いだけの私。

理沙が、おそらく幸一を選びたがっているのだと、私が思ったときに湧いてきた感情というか、はっきり言えば、怒りや、悔しさや、寂しさに流されているだけの私。

今振り返れば、本当に幸一を選びたかったのかどうかさえ、理沙の言葉から断定することなんてできないと思えるのに、あの時は、理沙はそうなのだと、私は判断し、そして勝手に憤った。

理沙が嘘を付いたこと。

そのせいで、私の中には、理沙が本当のことを言えない相手になってしまったという寂しさも生まれていた。

悔しいし、泣きたいし、情けないし、かと言って、そんな感情を爆発させて怒鳴り散らすことすらも私はできなかった。

おそらく、変な意地まであったんだ。

あの時は、それが頭の中いっぱいに広がっていた。

だから、理沙を受け入れるようなことを言える気持ちにはならなかった。

そして、理沙が一番、突き放されたと思うであろう言葉を、私は自然に、思いついてしまっていた。

その時の理沙が最も言われたくないであろう言葉を。

でも、それを、私は、それほどの考えも無しに、告げた。

これが、理沙に告げた言葉の中で、私が、一番後悔し、そして嫌悪しているものだ。

「俺には、美佳が居る」

と。

おそらく、理沙に対するトドメの言葉だった。

「お前は不必要だ」「お前の代わりはいるのだ」と言ったのと同じだ。

そしてまた、理沙と美佳を比べて、美佳のほうが、私の奴隷としてふさわしいと言ったのだ。

奴隷を比較するという、多分、最もしてはいけないことを、私はここでやっていた。

もっと言い方があったと思う。

同じように、理沙を幸一の方へと向けるにしても、違う方法はあったはずだと思う。

でも、あの時の私は、この言葉を選んだ。

自分で選んだのに、後から、猛烈に後悔した。今になっても、まだそう思っている。


それを聞いた瞬間の理沙の顔ははっきりと覚えている。

なんと形容していいのかわからない。

グチャグチャ。

とでも、言えばいいのだろうか。

理沙は大声で泣き喚いた。

私にすがって泣いた。

ずっと、泣いていた。

そして、本当に長い時間が経って、泣き終わった時、静かに服を着ると、私に土下座をして、理沙は言った。

「申し訳、ありませんでした」

と。

それだけを言って、部屋を出ていった。


理沙が帰ったあとのホテルの部屋。

これで確実に理沙を失ったと思った。

それも、私が、私の言葉で、私の態度で、そうしたのに、私も、泣いていた。


テーマ:主従関係 - ジャンル:アダルト

このブログについて

著者:vet

 ※このブログには、エロ動画やエロ画像、官能小説のようなものは一切無いが、内容が内容なので、SMや主従関係という、恋愛の形に不快感を覚える人、違う世界の話だと思う人などはすぐにブラウザを閉じて、このブログのことは忘れるように。

 私は以前、牝奴隷を飼っていた元”御主人様”。でも、今は飼っていない。奴隷を手放した経緯とか、過去の奴隷の話、そのときの気持ち、奴隷への想い、今だから考えられること、言えること。書きたいことを書きたいままに綴るブログ。
 また、今、これを書いている私の現状について、ご質問を頂くことが結構あるので、それについては、
 ◆私について
というカテゴリの中に、”現状の私”というエントリーにして書いておいた。このカテゴリには、私自身のこと(私の好みや、調教の方針など)をメインに書いているエントリーを入れてあるので、興味のある方がいるかどうかは分らないが、もしも気になるなら、見ていただければと思う。

 SM話はストイックになりがちなので、多少軽いタッチのコラムも交えて書いてみようと思う。奴隷を飼っていない今だから書ける御主人様の本音などをできるだけわかりやすく、そして正直に。今、奴隷になっている牝や、御主人様を探しているM女なんかには、御主人様の側の気持ちが少しは分かってもらえるかもしれない。ちなみに、私は理系的な思考傾向なので、考えすぎることが多く、そのために、なにやらややこしいことになることも多々ある。そのあたりも笑って読んでもらえれば、幸い。

 メールやコメントなども楽しみにしている。気軽な恋愛話、気楽なSM話から、SMや主従関係のこと、Mであることなどについての悩みや、相談、質問など、真面目なお話まで、どんなことでも、しっかり伺おうと思っている。恥ずかしいとか、こんなことを言っては変に思われるのではないか?とか、考えることもあるかも知れないが、私は、それなりに長くSMや主従関係の世界に居たので、それほど驚くことは無いと思うし、他人と変わっていることでも、変だとは思わないできちんと伺うつもりなので、メールやコメントは、遠慮せずに送ってくださればと思う。

 リンクフリーなので、気に入ったら、好きにリンクしてくださればと思う。言っていただければ、私からもリンクするので、そういう意味でも気軽に声をかけてもらえれば幸い。

 このブログは、私が奴隷と過ごした日々を時系列で綴った続き物の話と、SMに関するちょっとした小話や、SMに対する私の考えや体験、見聞きした面白い話題などを個々に書いた単発物のコラムとが混在している。

 続き物の話は、エントリーの題名に第何話という番号が書いてあり、以下のカテゴリにまとめてある。
 ●最初の奴隷
 ●二匹目の奴隷
 奴隷と私とのストーリーを読みたい場合にはこちらを読んでもらえればと思う。

 単発物のコラムは、以下のカテゴリにまとめてある。
 ●四方山話:1エントリーでひとつの話
 ●四方山話(続き物):複数エントリーでひとつの話
 短い話を気軽に読みたい場合にはこちらを読んでもらえればと思う。

 単発物のコラムの中でも、SMの技術的な話だけは別にしてある。それは、
 ●SM技術
にまとめておいた。技術的なことに興味のある場合には、こちらを読んでもらえればと思う。

 カテゴリの記事は古い順に並べてあるので、カテゴリ名をクリックしてもらえれば、続き物の記事でも最初から順番に読めるようになっている。


  当ブログ内に書くことは、私が実際にやってみたことや考えたことであって、それが正しいかどうかを完全に検証したわけではない。だから、もしも同じことを試す場合には自己責任で、細心の注意を払って実行して欲しいと思う。SMなので、体への損傷などの可能性もなくはないから。とにかく気をつけて欲しい。そして、このブログ内のことを試して、いかなる不利益が生じたとしても、私、vetは免責されることとする。そのことはしっかりと承知した上で読んでもらいたい。
 奴隷のためにも、そして御主人様のためにも、本当に無茶なことはしないで、幸せなSMを楽しんで欲しいと願っている。

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当ブログの管理人、vetへのメールは以下のリンク先のメールフォームから送っていただければと思う。2つあるが、どちらのメールフォームからでも、良いので、都合の良い方を使ってもらえればと思う。

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